吉田のうどんとは、山梨県富士吉田市や河口湖周辺で愛される郷土料理のうどんのこと。
硬くてコシが非常に強い麺や馬肉やキャベツをトッピングするのが特徴となっている珍しいうどんです。
各地のふるさとの味の中から選定した「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれています。
吉田のうどんの特徴5つ
吉田のうどんの特徴は太くてコシの強い麺、馬肉、キャベツを使用したトッピング、味噌と醤油をあわせた汁です。すりだねと呼ばれる辛味を入れて食べるのも日本でここだけ。
吉田のうどんは元々は家庭料理だったので、店ごとに様々な特徴があり、例えば店によっては牛肉や馬肉を使用していたり、面の硬さも長さもバラバラです。
大まかなルールはあれど明確なルールがないという自由さもまた吉田のうどんの特徴なのかも知れません。
吉田のうどんの特徴① 麺
最も大きな特徴として、非常に硬くてコシが強い面があげられます。
通常うどんといえば断面は丸く、やわらかいツルッとした食感ですが、吉田のうどんは麺が太くてねじれていて断面は正方形に近いものが一般的です。さらにうどんの太さも長さもバラバラ。硬さのある麺にハマるといろんなお店を訪ねてみたくなります。
吉田のうどんは特に冷やしで注文するとその硬さは他の地域では体験出来ない程。
『茹でてないのでは?』と勘違いしてしまう人もいるようです。
吉田のうどんの特徴② うどんのつゆ
つゆのベースは煮干出汁、椎茸の出汁、醤油、味噌など、家や店によって違います。
醤油&味噌ブレンドが主流ですが味噌ベース、醤油ベースだけのお店もあり、それぞれのお店がこだわりの素材を使用したつゆを作ります。
また、お店によってはカレーうどんなど変わり種のうどんがあるお店も。
吉田のうどんの特徴③ トッピング
一般的なうどんのトッピングはねぎ、油揚げ、天ぷらなどですが、吉田のうどんの代表的なトッピングはなんと“茹でキャベツ”
うどんの消化を促す効果のあるキャベツが必ずトッピングされています。
さらにお肉は“馬肉”のお店が多数を占めます。
その他店によりきんぴらごぼう、かき揚げ、ちくわの天ぷら、生卵、山菜など。トッピングの追加で自分好みのうどんにカスタマイズすることが出来ます。
うどんにきんぴらごぼうなんて新しい感じがしますが、味の染みたきんぴらごぼうもおすすめのトッピングの一つです。
お店によっては天かすがテーブルに置いてあるところもあり、自分で好きな量をトッピングすることが出来ます。
吉田のうどんの特徴④ すりだね
すりだねは、赤唐辛子とゴマとごま油に山椒を入れた調味料で吉田のうどんには欠かせないものです。こちらもやはりお店によって違い、油で炒めたり、醤油や砂糖・おかかを入れたりと独自の味を確立しています。
吉田のうどんの特徴⑤ 民家
吉田のうどん屋さんは昔から営業しているお店も多くあります。
自宅の一角をそのままうどん店として営業していたり、居間だったり、客間だったり。
まるでおばあちゃんちでうどんを食べているような感覚になります。
吉田の魚介豚骨味噌うどん誕生秘話
従来の吉田のうどんはカツオや煮干しなどの魚介からとる出汁を使うのが一般的で、その出汁としょうゆやみそを混ぜ合わせてスープを作ります。
当店でもオーソドックスなスープを採用していましたが、二郎系うどんを作るために使用する豚骨と鶏ガラを使った出汁に味噌を入れてスープを作ったところとてもおいしく、採用することに決めました。
この世に豚骨スープをうどんに使っている店はほとんどありませんし、伝統的な吉田のうどんとは少し違いますがぜひ一度お試しいただきたい一品です。
吉田のうどんが生まれた富士吉田市の歴史
余談ですが吉田のうどん発祥の街富士吉田市をご紹介いたします。
富士吉田市は富士山麓の標高約650mから850mにある高原都市です。
年間平均気温11℃、さらに富士山噴火による溶岩流や火山灰という土壌のため稲作には不適な地域だったそうです。そのため大麦・小麦・粟(あわ)・稗(ひえ)・とうもろこしなどの栽培をおこない、現在のうどん文化の基盤となりました。
富士吉田ではもともとうどんは正月や結婚式など晴れの日に食べる特別なものだったそうですが、江戸時代には富士講が盛んになり訪れた参拝客や登山客、富士吉田の産業である織物を買い付けに来る人々に対してふるまったことで徐々に広まっていったそうです。
また、麺の太さ・硬さ特徴的ですが、その由来として産業である織物業は女性の仕事だったため、織物を扱う女性の手が荒れないように男性が代わりにうどんを作るようになり、コシのあるうどんが主流になったそうです。